演者:小林亮太先生(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 准教授)
日時:2024年3月8日
場所: 薬学部研究棟セミナー室8(杉谷キャンパス)
参加人数:22名
【報告内容】
今回、時系列データ解析のエキスパートである小林亮太先生にご講演いただいた。ご講演ではまず、これまでの神経科学研究者との共同研究で小林先生が挙げた研究成果のうち、ニューロン活動の実験データから神経ネットワークの結合様式を推定する計算論的な手法についての紹介があった。こうした手法は今後の実験(ウェット)と理論(ドライ)の融合を進めていく上でも非常に有効であることが示唆された。次に、デジタル世界における人々の行動履歴ともいえる、ソーシャルメディアデータを分析することでどのようなことを調べることができるかが紹介された。 例として、欧米の大きなスポーツイベント(サッカーのヨーロッパチャンピオンズリーグの試合など)や祝日など社会的イベント前後におけるウィキペディアの関連ウェブページへのアクセス数の時系列データから考察されたオンライン上の人々の感情変化についての研究が紹介された。また、Twitter (X)上に投稿された1億以上の日本語ツイートを分析することで、新型コロナワクチンの接種期間中にワクチンについての人々の興味・関心がどのように変化したのかを調べた研究成果の紹介があった。以上のご発表について、非常に活発な質疑応答と議論が行われた。
特に、スマートフォンの普及に伴い、ソーシャルメディアでの情報発信の重要性は加速的勢いで増大しており、人々の行動原理を探る上でも時系列データ解析がますます重要になってくることが考えられた。
(報告者 西丸 広史教授 認知・情動脳科学専攻)