演者:古田 貴寛 先生(大阪大学大学院歯学研究科 系統・神経解剖学講座 教授)
日時:2025年2月5日(水) 17:00-18:30
会場:富山大学 杉谷キャンパス 講義実習等303室
参加人数:約20名
【報告内容】
げっ歯類(ネズミ)の長いヒゲは優れた触覚センサーで、ネズミは暗闇でもヒゲの感覚を頼りに動き回ることができる。ヒゲの根本には精密な神経組織があり、機械的な入力を神経活動に変換する。この神経組織の仕組みは、我々人間のもつ触覚受容メカニズムと類似しており、ネズミのヒゲシステムを題材として研究することによって触覚システムの解明に貢献することが期待できることが最初に説明された。
また、ネズミはヒゲを積極的に動かして対象物に触りながら探索行動を行うので、ヒゲは神経系の運動制御メカニズムを調べる題材ともなり得ることについても強調された。さらに、感覚器であるヒゲを運動させながら利用することはアクティブセンシングともいわれ、神経系において感覚情報処理と運動制御の統合機能のあらわれであることから、ヒゲの研究が感覚–運動連関という難解な高次脳機能の解明につながる可能性を秘めていることが示された。
これらの前提を踏まえ、古田先生は、ヒゲ運動と中枢神経におけるニューロン活動との関係性を、高い時空間解像度で解析することにより、運動に関わる神経回路の成り立ちを調べてきた。本セミナーでは、古田先生のグループが最近得たデータを中心に、触覚や運動に関わる神経回路研究についてお話しいただいた。
講演後、多くの聴衆から質問が出た。学部学生も含め積極的に質問する姿が見られ、この研究領域の重要性が再確認された。