「怒り」やストレスにかかわる神経生物学的基盤の探索
【演者】筑波大学人間系・准教授
高橋 阿貴 先生
【日時】2022年12月23日(金)17:00~18:15
【場所】杉谷キャンパス講義実習棟 203号室
【参加人数】18名
【世話人】西丸 広史(認知・情動脳科学専攻)
【報告内容】悪口を言われたり、危険運転をされるなど、他者から挑発を受けたと感じると、私たちは苛立ったり攻撃的な気持ちになったりします。このような社会的挑発が攻撃行動を増加させるという現象は、魚からラットやマウスなどのげっ歯類まで、さまざまな動物において観察されています。高橋先生はこれまでにこの神経メカニズムの研究で顕著な業績をあげていらっしゃいます。本講演では、社会的挑発により雄マウスの攻撃行動が増加する神経メカニズムについて、脳内セロトニン神経系の神経核である背側縫線核に着目した解析について、特に、不快情動やストレスに関わる外側手綱核からの入力が、攻撃行動の昂進にかかわることを明らかにした最新の研究成果を、未発表データを含めて詳細にご紹介いただきました(参考文献1)。さらに、これらの関連領域に炎症性サイトカインが作用することで、攻撃行動の個体差にも影響を与えていることを明らかにした先生の研究についてもご紹介いただき(参考文献2)、これら研究成果を踏まえた、動物の攻撃行動が過剰になる神経生物学的なメカニズムについて活発な質疑応答を行いました。また、これまで攻撃行動をほとんど示さないと考えられていた雌マウスにおいても、攻撃行動を研究するための新しいモデルが近年提唱されてきており、性差研究への可能性についてもご発表と議論が行われました。
(参考文献)
- Takahashi et al. (2022) Nature Communications. 13:4039.
2. Takahashi et al. (2022) Molecular Psychiatry. 27(5):2563-2579.