生体情報システム科学専攻 授業概要

生体情報システム科学専攻科目

授業科目名 講義等の内容
構造生物学特論
水口 峰之  教授
タンパク質の機能はタンパク質分子の形と密接に関係している。タンパク質の三次元立体構造は、DNA配列の転写と翻訳で生じたアミノ酸配列によって決定される。タンパク質が機能的な構造をもつことに失敗した場合には、ミスフォールドしたタンパク質の蓄積によってアミロイドーシスなどの病気が起こる。この講義ではNMRを使ったタンパク質構造解析を概説し、さまざまなタンパク質について構造と機能の関係を議論する。さらに、講義ではミスフォールディングとアミロイドーシスについても概説する。
時間生物学特論
池田 真行  教授
単細胞生物から哺乳動物にいたるまで,ほとんどすべての生命には,環境から時刻情報なしに約一日の時刻を知るための体内時計システムが備わっている。今日では,遺伝子発現リズムから個体行動リズムに至るまで,広範囲にその仕組みが解析されている。本講義では,特に哺乳動物の体内時計中枢(視床下部視交叉上核)の機能について1.神経出力機構,2.液性出力機構という不確定な観点から討論を促すことで,時間生物学の最前線を理解させることを目的とする。
タンパク質工学特論
黒澤 信幸  教授
タンパク質翻訳後修飾(PTM)は、タンパク質の活性、局在、相互作用等を制御することで細胞機能に重要な役割を担っている。PTMの種類は多用であり、これらを検出するためにはPTM部位特異的モノクローナル抗体(PTM-mAb)の開発が必要である。本講義では、モノクローナル抗体の作成の歴史、及び抗体工学の進歩について解説する。
生命代謝工学特論
佐山 三千雄  講師
遺伝子工学的手法で得られた遺伝子産物の機能を調べる際や有用物質産生のためのバイオリアクター構築設計に関わるバイオテクノロジーの分野や、医薬品の薬効発現や安全性試験に代謝の概念や技術は必要不可欠であると考えられる。つまり、代謝を主とした生化学的分野は生命工学や医療科学を含めた生命科学の領域で欠くことのできない分野であると言える。代謝研究の手法、有用物質産生につながる特殊な代謝経路、医薬品の薬効と毒性発現と代謝(特に毒性発現)との関わりについて講義する。
生体情報素子設計学特論
篠原 寛明  教授
これからの高齢福祉社会、より健康と安全安心が求められる社会では、生体(バイオ)系と電子機器(エレクトロニクス)系とのコミュニケーションを図るバイオ-エレクトロニクスインターフェイスの設計・開発が必要となる。このようなインターフィエスデバイスやシステムの設計論を教授する。具体的には以下のような項目について学ぶ。 1)医療診断、創薬、環境計測などにもはや欠かせないバイオセンサ、生体情報計測技術の開発の基礎的考え方と最近の研究状況 2)生体情報の変換や伝達に関わる分子の機能や動作機構と、その人工改変による情報分子素子、バイオエレクトロニクス素子への応用に関する最先端研究状況 3)生体機構に学んだエネルギー、物質の変換に関わるバイオ素子、デバイス、システムの最新の研究開発動向 4)細胞内あるいは細胞間における情報の変換や伝達機構の新規な解析法や可視化法また制御法の研究動向
神経システム工学特論
川原 茂敬  教授
複雑な生体システムを理解するためには、基本となる生理学的知識を身につけるとともに、生体計測に関する工学的技術や、計測結果から有用な情報を引き出すための情報科学を総合的に学ぶ必要がある。本講義では脳システムの理解を目指して、神経生理学と脳機能計測法および数理的解析法について解説する。
バイオ計測素子工学特論
鈴木 正康  教授
バイオチップやマイクロアレイ技術、微小集積化バイオセンサなど最新のバイオ計測技術の現状と諸問題、今後の展望などについて学習する。
神経系情報工学特論
金 主賢  講師
生体が、環境からの情報を受容し、中枢において統合、最終的には環境に適応した行動をとおして環境に働きかける一連の過程において、情報は神経細胞並びに神経回路網により処理、伝達される。本講義では、神経細胞並びに神経回路網において情報がどのように処理、伝達されるかを神経科学的および工学的観点から概説する。
生体組織医工学特論
中村 真人  教授
細胞から生体組織や臓器を工学的に作る再生医工学の研究が進んでいる。再生医工学の研究の背景、現在までの手法と課題や問題点を解説し、それらに対する最新の研究の取り組みや成果を紹介する。さらにそれらの技術を如何に生命科学の研究や臨床医学へ応用するか、如何に社会に事業として実装していくかを展望する。
生体分子生化学特論
松田 恒平  教授
神経系、内分泌系および免疫系において生理活性物質やその受容体等の生体内情報伝達を担う諸物質の機能解析が急速に進展している。本講義では、中枢および末梢における細胞間および細胞内の情報伝達機構の様式と分子基盤について、特に本能行動やエネルギー代謝の制御に係る分子群について解説する。また、個体間の情報伝達を担うフェロモン情報伝達系の最新知見についても紹介する。
和漢機能学特論
東田 道久  准教授

和漢薬・漢方薬における独自の個性的視点を古典を紐解くことにより理解し、現代医療に生かす研究視点を考察する。多くの純薬は“抑制薬”であるが、漢方薬のほとんどが生体本来の防御機能に働きかけ“活性化”することで作用している。ウイルス等の感染症に対する重症度に合わせた対応法を示した「傷寒論」が代表例であるが、それら和漢薬・漢方薬の視点を理解し、最新の解析手法を用いた研究を行なうことにより、全く新たな成果が生まれる可能性があることを理解する。うつ病をはじめとした機能性精神疾患に関連する内因性因子の和漢薬を用いた解明の手法とその理論に関しても紹介する。加えて、漢方薬における生薬の組み合わせの意義に関しても現代薬理学的視点から理解し、組み合わせを基盤とした超微量有効作動性成分の発見が新たな視点での新薬となりえる可能性について議論する。

薬理学・遺伝子工学特論
髙﨑 一朗  准教授
薬理学は,薬と生体との相互作用の結果起こる現象を研究する科学であり,薬物治療の基盤を確立する科学である。それゆえ,薬理学の研究には薬と生体の両方を十分に知る必要があり,解剖学,生理学,生化学,分子生物学,遺伝子,化学などの基礎知識が要求される。本講義では,薬理学および遺伝子工学に関して,最新の研究,諸問題,今後の展望について議論する。
細胞ストレス生物学特論
田渕 圭章  教授
細胞は,様々なストレス環境に適応するためにストレス応答システムを有しています。その一つである小胞体ストレス (ERストレス) は,各種ストレスによって構造異常のタンパク質が蓄積した時に誘導され,ERストレス応答 (unfolded protein response, UPR)と呼ばれる細胞の生存のための反応がおこります。一方,ストレスが許容範囲を超えると,細胞死が誘導されます。本講義では,ERストレス,熱ストレスやメカニカルストレスによる細胞応答の分子メカニズムについて概説します。
タンパク質代謝学特論
伊野部 智由  准教授
我々の生命活動を実質的に支えているのはタンパク質である。体の 中では日々多くのタンパク質がつくられ、体を組み上げ、様々な機能 を担っている。一方で、不要なタンパク質は分解され取り除かれてい る。このように体内のタンパク質の量は、タンパク質の産生と分解の 絶妙なバランスの上で調整されおり、そのバランスの破綻は重篤な病 気や死につながる。本講義では細胞内で如何にタンパク質が作り出さ れ成熟し、そして分解されるかのタンパク質代謝について概説する。 さらにタンパク質代謝の人工制御に関する最新の研究も紹介する。