認知・情動脳科学専攻 概要

基礎医学、臨床医学、人文社会学など学際的なアプローチにより、高度医療人や先端的な脳科学者の育成を目的とし、人間らしさの科学(心の総合科学)の構築を目標としています。

専攻の概要

近年、長寿社会における認知症や、青少年の情動や行動異常による問題が増加している。 脳は、遺伝子誘導される種々の分子、胎内環境,出生後の外界(社会的)環境など様々な要因の影響下で一生涯発育していく唯一の器官である。 これら脳内の物質的過程の異常が、情動や行動の異常をもたらし、逆に情動や行動異常は、これらの物質的過程に影響を及ぼして脳構造だけでなく身体生理機能をも変化させる。 本専攻では、先進諸国で急速に問題化しつつある精神障害や情動・行動異常について、分子・細胞・システム行動レベルにおける基礎医学の各専門分野や、臨床医学、人文社会学を含む学際的な研究アプローチから俯瞰し、自ら対処できる高度医療人や先端的な脳科学者を育成することを目的とする。 本専攻の目標は,人間らしさの科学(心の総合科学)の構築であり、次の達成目標を置く。
  • 認知・情動・記憶の神経科学的解明
  • 情動と精神行動障害発症の神経科学
  • 高次脳機能障害発症の神経科学とその予防医療の展開
  • 脳発達の分子生物学的基盤の構築
  • 医薬一体の基盤を生かした脳科学研究の推進と創薬
  • 神経情報ネットワークに関する分野横断的解析

指導教員研究内容一覧

教育分野 指導教員 研究内容
システム情動科学

教授 西丸 広史

プロフィール 関連サイト

  • 大脳辺縁系における情動、学習・記憶及び行動発現の神経機構
  • 社会的認知機能ならびに非言語的コミュニケーションの神経機構
  • 非侵襲的脳機能計測によるヒトの高次脳機能解析
  • 中枢神経自立神経機能調節機構
  • 感覚情報の中枢性認知機構
  • 情動発現における運動感覚統合メカニズムの解明
  • 報酬価値に基づく行動決定の神経機構
  • AIによる動物の行動評価法の開発と精神・神経疾患の研究への応用
分子脳科学 教授 井ノ口 馨 プロフィール 関連サイト 分子生物学・生化学・細胞生物学・組織化学・電気生理学・行動薬理学・光遺伝学・脳内ライブイメージングなどの手法を駆使して、ほ乳類の記憶痕跡ならびにアイドリング脳活動の機能を包括的に明らかにすることを目指している。

  • 記憶痕跡の実体に関する研究
  • 記憶痕跡の動態に関する研究
  • アイドリング脳の機能に関する研究
分子神経科学 教授 森 寿 プロフィール 関連サイト


准教授 吉田 知之 プロフィール 関連サイト

  • 新たな遺伝子操作マウスの作製と認知・情動・社会性の分子機構解析研究
  • マウス脳内遺伝子発現イメージング法の開発と解析研究
  • 免疫系による脳機能修飾機構の分子的解析研究
  • 中枢シナプス形成の分子機構に関する研究
  • 神経発達障害の発病機構に関する研究
統合神経科学 教授 田村 了以 プロフィール 関連サイト
  • 海馬体における学習・記憶の神経機構
  • 海馬体における時間的符号化
  • 大脳皮質-海馬体相互作用
  • 睡眠による記憶促進機構
  • 眼球運動機能解析
  • 中枢神経系での味情報処理機構
  • 成体神経新生
神経精神医学 教授 鈴木 道雄 プロフィール 関連サイト 


准教授 高橋 努 プロフィール 関連サイト

  • 統合失調症の脳画像と発症機序、客観的診断法の開発
  • 統合失調症の認知障害を改善する薬物療法の開発
  • 統合失調症の動物モデルの開発
  • 思春期・青年期の脳の発達と人格形成、社会性の脳内機構の解明
  • 認知症の脳病態解明と早期診断法の開発
脳神経外科学 教授 黒田 敏 プロフィール
  • 脳虚血の病態と外科治療に関する基礎および臨床研究
  • 脳血行再建術の手技、周術期管理に関する臨床研究
  • 脳神経血管内治療に関する基礎および臨床研究
  • 中枢神経の再生に関する基礎およびトランスレーショナル研究
  • もやもや病の病態と治療に関する臨床研究
  • 小児神経外科疾患の病態と治療に関する基礎および臨床研究
  • 脳腫瘍の集学的治療に関する臨床研究
  • 中枢神経における腫瘍幹細胞に関する基礎およびトランス レーショナル研究
  • 神経内視鏡による非侵襲的治療に関する臨床研究
  • 産学連携による手術器具、機能回復支援装置の開発研究
解剖学・神経科学 教授 一條 裕之 プロフィール 関連サイト
  • モデル動物の利点と非モデル動物の特異性を利用して,動物 の行動に関わる神経回路の構造・機能と進化を研究します。
  • ストレスなどの忌避的な環境をコードする手綱核の構造と機 能を前後と左右のトポグラフィーや成熟性を手がかりにマウスにおいて探索します。
  • ストレスに反応する神経回路の個体差とその機能的な意義を探索します。
  • 生得的な動物行動が進化するindividual-based modelを作成して、進化機構を研究します。
  • 左右非対称な捕食行動をしめす鱗喰性魚類の神経系の構造と機能を探索します。

臨床心理学・

認知神経科学

教 授

 袴 田 優 子

うつ病や不安障害などのストレス関連精神疾患を抱える患者やその発症リスクを有する健常者にみとめられる認知処理上の問題の神経生物学的な発生機序について明らかにするとともに,こうした問題の軽減・改善に有効な心理学的予防・治療法の開発を行っている。認知処理上の問題はしばしば認知バイアスと呼ばれるが,このうち主に注意や記憶(符号化や固定化,検索を含む)に関するものを扱う。

(1)  不安や抑うつの生起に関与する認知処理上の偏りに関する研究

  a) その認知科学/実験心理学的手法による測定方法論

  b) その神経生物学的発生機序(神経画像,DNA,内分泌・免疫炎症系指標を含む)

  c) そのストレスや精神症状への影響

(2) 認知の偏りを標的にした有効な介入法に関する研究

  a) 新規介入法の開発とその効果評価

  b) 認知行動療法等の既存アプローチの最適化

(3) 有効な介入法の社会的普及に向けた研究

  a) 要支援者の需要・障壁(社会学的・質的研究を含む)

  b)  普及手段の開発

行動生理学 教授 高雄 啓三 プロフィール 関連サイト フェイスブック
  • 記憶・学習、情動、認知などの精神機能の生理的基盤の解明
  • 行動解析による精神・神経疾患モデルマウスの探索と評価
  • モデルマウスを用いた精神・神経疾患の病態解明と治療法の開発
  • 生殖発生工学による新たな遺伝子改変マウスの作製
  • 新しい生殖発生工学技術の開発
システム機能形態学 教授 伊藤 哲史

 知覚,特に聴覚系の脳内符号化や認知のメカニズムの詳細を機能と構造の両面から解明するべく,以下のような様々な実験アプローチを行う。
(1)神経生理学技術と神経解剖学技術を組み合わせることで,特定の機能を有する神経回路の詳細な構造を明らかにする。
(2)神経回路を構成する個々の素子たる神経細胞の機能的特性,形態学的特徴,さらに分子発現を解明することで,神経回路を構成する個々の神経細胞種を機能的に位置づける。
(3)知覚行動で顕著な特殊化を示す非モデル動物の神経回路
を解明し,モデル動物との比較を行うことで神経回路の機能構築の詳細とその進化を明らかにする。
(4)神経回路の特定要素の活動を操作することで神経回路の活動様式がどのように変化し,それによって行動がどのように変容するか明らかにする。

分子神経病態学

准教授 山本 誠士

(R5.2.1~)